銀曜日のおとぎばなし 萩岩睦美 著

眠れずに昨日買った漫画を読んでいる。ずっと号泣。なんでこんなに朝っぱらから泣いてるのか。自分で呆れる。ポーの純粋さがたまらん。萩岩睦美の作品を読むたびに、あたしはなぜか、うちの長女のことを思い出す。声を聞くだけで背筋が伸びるような厳格さと、いつまでたっても子どものような純粋さを同時に持ち合わせている姉。萩岩睦美の作品の主人公は、いつも愛情と純粋さと、人間の持つ残酷さに塗れていて、とても綺麗だ。美しいという言葉から連想されるイメージとは、少し遠いかもしれないが。私にはこの上なく美しい物語に思える。
文庫本で全3巻。いったい何度読み返すのだろう。読むたびに新しい発見がある。すごく詩的でファンタジックなのに、根底には恐ろしいほどのリアリズムが流れている。人の醜さ、優しさ、厳しさ、寂しさ、いろんなものが凝縮されて詰まっている。そんな漫画だ。こんなに愛らしい絵で、こんな奥深いストーリーを描くなんて。本当に昔の少女漫画ってすごい。
最近は売れるものが主流になっているけれども、ぱっと売れて、すっと消える。いつまでも残り読み継がれるものというのは、やはりストーリーがしっかりしていて、深遠なものだ。この銀曜日のおとぎばなしは20年も前に描かれた作品で。なのに、内容がまったく古くさくない。
SFはとてもリアリズムがあり、ノンフィクションほど夢を求める。空想の世界は、より現実的に描かないとリアリティが出ないし、ノンフィクションほど、現実からかけ離れたものの方が夢や想像を掻き立てられて驚きがあるので受け入れられる。当たり前と云えば、当たり前のことなのだが。現実がつまらないから、そこからイロんな空想をして作り上げられるものがSFのはずなのに、そこに最も必要な要素がリアリティであるなんて、人間とはなんて浅はかで矛盾した生き物なのだろうと滑稽ですらある。そして、ノンフィクションにしても「実話」であるということが売りになるというのに現実離れしたものであるほどウケるというのは、本当に変な話だ。毎日の淡々とした出来事、朝食を食べて仕事に出かけて・・・ なんて書いても、誰も読もうとはしないだろう。
この銀曜日のおとぎばなしは敢えて区分けするなら、ファンタジーになるのだろうか。小人のポーが主人公で、小人と人間のふれあいを描いている。なんだかETみたいな話だけれども、すごく人間が描かれていて、キャラが愛らしく、本当によくできた漫画だ。私はこれを手放しで絶賛したい。
いつか私に子どもが生まれたら、絶対に読ませたい作品だ。今日は泣き疲れた。