おりえが禁煙だってさ

13歳から煙草を吸ってるらしい。おりえは今27歳だから、もう14年。そんなおりえが煙草をやめたいと言い出した。どうやらかなり本気らしい。
煙草を吸ってないと、イライラするらしく、舌打ちが増える。キヨミちゃんに「舌打ち一回一万円」と云われているはずなのに。おりえの借金総額は考えただけでも、ちょっとちびってしまいそうな額になってるはずだ。
そんなにイライラするなら吸えば良いのに、おりえは我慢してる。我慢してるオリエは、はっきり云って、気持ち悪い。今までろくに我慢や忍耐を知らずに育ってきた女のやせ我慢は、見ていて痛々しい。
パソコンに向かって作業してると、うっかり手に持って、気がつくと吸ってる。あはは、ついに吸いやがった!なんておもって見てるんだけど、吸ってしまった自分にまた腹が立つらしくて、一日中舌打ちをしてる。「ああ、もぉっ」だとか。そんな奇声を発したりして、正直うっとうしい。
なので、ぼくが煙草を隠してやることにした。これが結構、重い。おりえはこのマルボロって煙草を吸ってる。カッコイイとおもっているらしいが、こんなの、おっさん煙草だ。いろいろ小さいこだわりがあるみたいで、ボックスはどうしてもイヤらしい。コンビニの店員がボックスを出してくると露骨にイヤな顔をしている。ソフトケースって云うてるやろーが。ぼそっと呟く声が、ポケットにいるぼくに聞こえる。おりえは独り言が多い。
煙草、やめられると良いね。おりえ、がんばってね。

でも、ここだけの話、ぼくは知ってるんだ。この禁煙宣言も、恋する乙女ゴッコの一環だってことを。