報告

Nさんに見せてきました。
赤が入るところが、明らかに以前とはちがう。「お酒」を「酒」に書き換えられたり。表現に関してはほとんど何も言われなかった。すごい快挙だ。
最近のわたしの「自信がない」発言を受けて、Nさんは結構悩んでいた模様。Nさんは興味のないものには適当な受け答えしかしない。どうでも良い作品は斜め読みすらしない。わたしはそれを知ってるので、どんなに否定されても説教されてもそれで挫けたりはしない。何かを熱く伝えようとしてくれている間は、わたしにそだけ時間をかける価値があるんだってのが、わかる。けど、かなり困っていたらしい。
自信がないってのは、わたしの内向的な部分が悪かったんだけど。Nさんはそうはおもわなかったようだ。
「格段によくなってる」
「文章に独特のテンポが出てきた」
「毎回のことだけど、会話文は秀逸や」
「最後の暗喩がいい」
「しっかり考えて書いたのがわかる。このひよこの話もいい」
とにかく、誉める。誉めて誉めて褒めちぎる。
「あの、なおすとこを、教えてください」
わたしの方から切り出すくらい、誉められた。たしかに、今回のは自分でも良いできだったとおもう。でも、まだまだ見えてない粗がある。蠅叩きのようにばっしばっしと打ち払われることが当たり前だと覚悟していたので、物足りない。
「そうやな。ほな行くぞ」
「はいっ。よろしくおねがいします!!」
ビシッと体育会系の返事でわたしは姿勢を正す。
「まずこの男な、かっこよすぎる」
「細かいところに気が回ってない。ちょっとした言い回しで表現の幅は広がる」
「パーツパーツはおもしろいけど、やっぱり単発的な感じがあるな」
出てくる出てくる。云いたくてうずうずしていたんだろう。こうでなくっちゃ。
表現法の話ばかりしていた一年前。今は内容の話、登場人物の人間性に終始するようになった。
あと、相変わらずのわたしの一般常識の欠落。これがきっと今一番簡単に克服できる問題だ。
ボーナスの話があるんだけど、「ボーナスが終わり」と書いた。けれど、Nさんは「ボーナスは終わるとは云わんやろ」と。え? だってみんな「あー、今年もボーナスが終わった!」って云うやん・・・ あ!!
そう、わたしの周囲には経営者しかいないのだ。みんな支払う側。だから毎回ボーナスシーズンになると苦しんでいる。出す側からしたら「終わった」と感じてることでも、もらう側からしたら「終わった」とは感じない。そこに違和感が生まれる。わたしいとっては自然な言い回しが、とても浮いているのだ。そういうことが、多々ある。
今回の登場人物は主人公以外、ぜんぶ東京人だ。なので、今までの会話文のノリとはまったくちがう。でも、会話文だけは絶対の自信がある。言い回しや雰囲気がちがうくらいで揺るがない。鍵カッコだけで小説が書けるのなら、それを書きたいくらいだ。すごい楽だ。いくらでも出てくる。いつも会話文が延々続くので必死に削る。調子にのって書いていると、会話だけで話がどんどん進行してしまう。会話だけは最初から誉められていた。テンポが良いし自然だ、と。自分でも、そうおもう。
たくさん問題があるけれど、今回のは今まで書いてきたものの中で一番しっかり体裁が取れているようにおもう。明らかに、進歩してる。
人間が動き始める。わたしはいつも見えてる映像を勢いで文字に移しかえていく書き方をする。だから、「なんでここにヒヨコを出したんや」と聞かれても、「ヒヨコが見えたから」としか云えない。けれど、読み手は勝手にそれを暗喩として解釈してくれる。あとで自分で読み直すと、たしかに暗喩になってる。たいしたもんだなーと感心する。
どうにか50枚書いて、また教えられたところを書き直しするよ。こっからが大変。でも、こっからが、楽しいんだ。