報告その2

で、Nさんにやっと会ってきたわけですが。
会うまで、Nさんは、私に対して既にかなり呆れていて。俺はおまえに対する愛情が薄れかけているよ、とまで云われていた。
けど、なんか分からないけれど、あたしには確信があった。今書いてるものさえ見せれば、絶対にその愛情は完全に復活する、と。私が100の言葉を並べて、ここ数ヶ月の怠慢を詫びるよりも、書いたものを読んでもらう方が早い。読んでもらえさえすれば、Nさんは絶対に、私の完全な復活と、やる気を感じてくれるはずだ。そして、その予感は見事に的中した。さすがあたし。ビバおりえ。
会って最初の30分、ひたすら怒られた。叱ってるというよりも、なじられた、ってほうが的確なように思う。そして、やっと「それ、見せてみろ」と、私がずっと手に持っていた封筒を顎で指した。恭しく差し出し、静かな時間が始まる。
Nさんの目の色が、編集のそれに変わり、私は身体のあちこちが痛くなる。この時間が、とても長く憂鬱だ。
読み終えたあと、Nさんは喫茶店を出て、多摩川に向かって歩き始めた。
「あの原稿な、そう来たか、って思ったよ。おまえは空っぽやったんやな。ずっと、空っぽやったんや。何がそんなにつらかったんや」
包み隠さず、話した。考えていたこと、情緒不安定だったことの根本にある、私の強烈なコンプレックス。そして、復活したきっかけ。全てありのままを伝えた。
「あの原稿な、戦った痕があるよ。あれ書いててどうやった」
「楽しくて、書きたくて、うずうずしました。今も帰って、書き直したいです」
「うん。そうやろな」
その言葉を聞いて、一気に気が抜けた。河原で座り込み泣く私。
「おかえり。俺の惚れたおりえが帰って来た。今日は泣いても良いぞ。あの原稿は、ようやったな」
嗚咽が激しくなり、止まらなくなって、気の済むまで泣いた。
「あの、屹然って言葉な、あれ、違和感があったから、他の言葉を探せ。あと、情景描写はできてるけど、人物の説明がなさすぎて、知ってる人間にしかわからん作品になってる。書き足してこい」
ああ、そこまでちゃんと読み込んでくれたんだ。そう思うと、ここ数ヶ月の怠慢と自分の幼い精神が恥ずかしくて、そしてやっぱりちゃんと見守ってくれるNさんに感謝でいっぱいになった。
「屹然は、言葉が出てこなくて辞書から拾いました。確かに借り物の言葉です。考えてきます。あと、人物の説明はどうしてもくどくなってしまうので、何か良い方法があったら教えてください」
涙混じりに言葉を絞り出し、ゆっくり話をする。
Nさんは終始上機嫌だった。
腐っていた私を心配してくださっていた皆様、ありがとうございました。おりえは完全復活しました。また何かで揺れることはあるかと思いますが、今度はもっと上手に腐ります。
つーことで、かずくん、文通しよう。