冷たいお茶を注いだグラスには水滴がたくさんついていて、私の手を濡らす。
風が窓ガラスにぶつかって、ガタガタと揺れる音が不安を駆り立てる。
何に対しての不安かは分からない。ただ、不安になる。
大切なのは自分で責任をとることなんだよな。
そんなわかったような言葉が口をついて出てくる。
裏切られ、騙され、陥れられ、うそを重ねられ。
繰り返される戯事は、人間関係というゲームの過程。
裏切り、騙し、陥れ、うそを重ねないのは、私が自分で責任をとれないからだ。
自分で決めたことなのに。相手を責める資格はないな。
水滴のついたグラスは、さっき私の手で拭われたはずなのに、また新たな水滴を滴らせている。
滴った水滴で、テーブルが濡れている。テーブルの水滴に、そっと指先で触れると、水滴は小さくなる。何度も触れると、やがて水滴の形を成さなくなったその水の欠片が、私に小さな溜息をつかせる。