反省

大切にしているもの、愛しく思っている人を悪く云われると、どうしても我慢ができない。自分のことをどんなに云われても、どうってことないんだけど。どうしても我慢できない。
「あのヘビ、最近あんまし可愛くないよね、なんか太りすぎててー」
あるお姉さんが、ケタケタと笑いながら話しかけてきた。そのヘビは、オリエが以前飼っていて、東京に連れてきたヘビだ。他にも人がいたし、キヨミにいつも叱られていたので、黙って聞き流した。頑張ったのだ。もう頭にきて髪の毛ひっつかんで殴って窓から放り投げたいくらい腹が立った。でも、耐えた。そこで終われば良かったのに。そのお姉さんは、続けてしまった。 ブチッ。
「すっごい気分悪いんですよ、そういうこと云われると。黙ってもらえます?」
シーーーーーーーーン。
その姉さんが恥ずかしかったのだろう、へへへと笑ったのもまた癪に触り、イライライライラ。別の人が、私の顔の筋肉の引きつりに気づき、無理やり話題を変えた。「ありがとう」と心の中で呟いて、その部屋を出てきた。耐えれない。
少し太りすぎたヘビでも、私にとっては、ずっと大切に育てていた可愛い子なんだ。不愉快極まりない。きっとキヨミに出逢う前の私だったら、「同じデブでも、可愛らしい分、ヘビの方があんたよりずっと良いよ。デブでブサイクなんて悲惨だもんね。だからってヘビに嫉妬すんのは止めてもらえます?」くらい云ってる。出かかったもん。舌先まで。
でも、ふとキヨミの顔を思い出して、今反省している。どうして黙ってられないんだろう。なんで我慢できないんだろう。自分のことなら、デブとかブサイクとか云われても全然平気なんだけど。おもしろいって思えるんだけど。大切なものとか、愛しい人に関しては、どうしても許容できない。
まだむかついてるし。