あの頃にこれがあれば

逆上がりと、跳び箱はおろか、前転も後転もできない。鉄棒とマット運動が一切できない。
走るのも遅い。人生で出した最高記録が50メートル9秒5。小学校3年生レベルだが、これは私の体力の全盛期である高校のときの記録だ。
体力測定で必死に反復横跳びをしていて、体育教師に「頼むから真剣にやってくれよ」とお願いされたことも記憶に新しい。
肺活量は笑っちゃうくらいなくて一人で4回も測り直しをさせられた。
ラソン大会で意地になって完走したら、そのまま喘息の発作が出て入院。
臨海学校で、途中で泳ぎ通すのを諦めて一人で海岸に座り、みんなが泳いでいるのを眺めていた。「おまえはそれでええんか。途中で諦めてええんか!」真正面に立って怒った先生を見て、何を怒ってるのか分からず「はい、いいですけど?」と答えた若狭湾
プール開きで学校中でただ一人風邪をひき、そのまま肺炎になり「年寄りとか小さい赤ちゃんしか罹らないような肺炎なんですけどねぇ」と医者に首を傾げられた11歳の夏。これもそのまま入院だった。病室で点滴を入れられ、静脈注射で血液を抜かれながら聞こえてきた怒鳴り声。「あと3時間遅かったらオリエちゃんは死んでましたよ!」。廊下で叱られる母。40度の熱にうなされながら、私は思わずベットでくすくす笑った。「怒られとおんねん」と。(ちなみにこれは母が悪いんじゃない。最初に行った医者の誤診が原因だった。喘息と肺炎の苦しさの違いが分からなかった私のせいでもある。母は悪くないので誤解のないよう)
そんな体力と運動神経をすべて違う才能と引き換えに売り払ってしまった私が、今日見つけた本。【跳び箱とさかあがりができる本】。これがあの頃あったら・・・
ちなみに姉二人と母に「逆上がりができひんねん。オリエだけやねん、できひんの」と訴えたことがあった。
「ふーん。あんたどんくさいからなぁ。しゃあないんちゃう?」 ああ、仕方ないのか。そう思ったのをおぼえてるけれども。この本、読んでみたいな。
(追記 喘息は息を吐くのが苦しい病気。肺炎は吸うのが苦しい病気。幼い私はただ息が苦しいだけでどっちが困難な状態なのか自分で判断できなかった)