タカシの工房 タカシとの攻防

相変わらず、久々に会うと人見知りをする、寂しがりで照れ屋で嘘がつけない、気ぃ使いぃのタカシ。「おもてなしする」と言い張り、いらないと云う私たちの意見を一切無視して「寿司とピザなら出前あるけど、どっちがいい?」返事も聞かずにメニューを見てる。ここで強行に断るとタカシは落ち込むので、甘えることに。ピザを食べ終わった頃に、やっとタカシの人見知りがおさまってきた。見たことのない楽器や機材が並ぶので、私は大はしゃぎしてあれこれ携帯で撮影。タカシは機材の説明をしてくれ・・・・る訳もなく、聞いたことしか教えてくれない。その説明も、めっちゃ適当。
タカシが作成したチラシを知り合いに配ってあげるよ、ちょっとちょうだいと云って見せてもらって絶句。タカシは日本語が不自由だと以前書いたが、何一つ成長していなかった。私はペンを取り出し、作文開始。イラレを使える人間がPCの前に陣取り、ほぼ同時に、勝手にチラシのレイアウトをいじり始めた。
タカシが作ったチラシには、恐ろしいことに、連絡先が書かれてなかった。注文、どないして受ける気や! 爆笑してるあたしに照れてるタカシ。照れてる場合ちゃうやろ、とまた笑い、完成した宣伝文に目を通してもらう。レイアウトも着々と勝手に変更が加わり、タカシは隣で「うわ、めっちゃかっこええ。めっちゃ嬉しい。すごいすごい」と言い続けているだけ。そして自分の最初に作ったチラシを読み直して「ね、ここ、訳分からんでしょ」と指摘してあげると、タカシ自身も爆笑。おまえが笑ってどないすんねん。宣伝文、とても気に入ってくれた様子で嬉しかった。お礼、どうしたら良い? と聞かれ、また笑う。私はね、タカシが笑っててくれるのが、一番嬉しいんだけど。このチラシで一人でも多くの人が連絡をしてきてくれて、タカシの作ったギターで演奏してくれると、オリエはすごく、嬉しいよ。 タカシはその言葉を受けて、真剣な目をして、云った。「俺、ギターは作れるから」。カッコイイ。カッコイイぞ、タカシ。タカシはできないことは、云わない。そして、指先を失ってまでやり続けたギタークラフト。そんな彼だからこそ、云える言葉。「俺、ギターは作れるから」。すごく、染みた。
遅れて、いっちいという女の子が到着。いっちぃは、少し仲間としての距離が他のメンツより遠い。「手ぶらでお邪魔してごめんね」と入ってきて第一声。手ぶらで来てる挙げ句に勝手にチラシいじって、置いてある楽器をビンビン弾きまくり、ピザまで御馳走になって、満腹でタバコを吸いコーラを飮み、ビール飲んでるやつまでいる集団を前にして、なんてことを・・・ タカシは云った「そんなんええよ。こいつらなんか、見てみ。手ぶらの上にピザまで喰ってる。最低やろ」。これを聞いて、タカシは相変わらず不器用で、可愛いヤツだなぁと思った。タカシは、距離の近い人間のことほど、面と向かって悪く云う。そういう習性がある。目の前で悪口を云う相手ほど、タカシにとって信頼できる相手。それくらいの暴言で、仲が壊れたりしない。タカシはそう、信じてる。先に来ていたメンツは、みんなちゃんとそれを知ってる。肌で、知ってる。そして、タカシは人の悪口なんて絶対に云わない男だってことも、みんな知ってる。久々の再会に少し緊張気味だったタカシの気持が、ほぐれたんだなって、これでしみじみと分かった。
完成したチラシはもらって帰ってきたので。ギターの修理や、アコースティック各種をオーダーメイドで作成してみたい!って人は連絡ください。ギターは作れる ってタカシが云うんだから、任せても安心です。見積もりは完全無料だし、見学も歓迎とのこと。とりあえず、かずくんのことは伝えてきたから、いつでも来てー ってさ。行こうね^^

しかし、みんな相変わらず、本当にバカで。こんなキチガイがよくここまで集まったもんだ、と世話をやきながら嬉しくなった。
最後に、ラーメンが食べたいとゴネるワガママな男のために晩御飯はタカシお勧めのラーメン屋に決まった。メニューをみんなで囲んで「タカシ、お勧めはどれよ」と聞くと。「チャーシューメンは、チャーシューが入ってるねん。そんでから揚げ定食には、から揚げ・スープ・白ご飯と・・・」嬉しそうに説明するタカシに、耐えきれずに、私は突っ込んだ。「タカシ、それ、メニュー読んでるだけやん」
タカシは、真っ赤な顔して照れて、嬉しそうに笑った。今回は本当に、みんなの良い顔が見れて、オリエはご満悦だ。