「岸和田少年愚連隊」 中場利一


私は中場利一がとてもとても好きだ。
粗雑で、洗練されてなくて、文章もそんなにうまいとは、はっきりいって云えない。けど、それを補って余りあるだけの勢いと味がある。たまらん。


最初、岸和田少年愚連隊 望郷っていうビデオを見た。
最近目が肥えてきたのか、これはビデオならではの脚色だな、とか、原作にはこの人の説明がもっと詳しくあったはずだ、とか、そういうことが分かるようになってきた。活字でしか出せない行間と、映像にしか出せない空気。どっちにも違った魅力があって、どっちもとても素敵だ。

岸和田少年愚連隊に関しては「絶対に原作はこんなに完成されたものじゃないはずだ」だった。だって、映像でしか匂い立たないはずの素材ばっかりだったんだもん。ってことは、原作ではキャラが立ってたのかな、と感じた。


概ね、間違ってなかった。
まったく違う作品だったけど、どっちも好きだ。

関西弁で書かれているから、匂いとか風とか、そういうものをダイレクトで肌に感じることができる。
南の方の言葉は、あたしみたいに大阪北部の人間には少し分からない部分もあるんだけれど、登場人物の表情とか、その場の情景が流れるように浮かんでくる。


中場利一の作品は、愚連隊シリーズとか、まったくの創作以外はほとんど全部読んでるけれども。
どれも何度読んでも楽しい。