「インザミソスープ」村上龍

肉片をドアに塗り付けるシーンを読んだ日。
家に帰るのが怖かった。


中学生の頃から、すごく不思議に思っていたことがあった。
なぜ、ドラマや本なんかでレイプされた女性は、いつも生理中じゃないんだ。女性の生理には周期があって、「生理はうつる」って言うくらい、友達同士で重なることが多い。
単に月の満ち引きに関係あるだけならしいけれども。
それでも、毎月てんでばらばらにみんなに訪れているはずの生理中に、レイプされた瞬間がぶちあたらないのは何故だ、とすっごーーーーーーーーく不思議で仕方なかった。
いや、面倒だし、そういう設定が必要なかったから描かれていないだけだったんだけれども。なぜ見当たらないんだろう。
ずっと不思議だった。
そして、来た。
この作品にはあった。
女性が殺されて、タンポンがずり落ちた、というくだりがある。読んでて震えた。なんだこれは。すごいじゃないか。リアルじゃないか。村上龍の文章は、とても野性的だと思う。
山田詠美のは、洗練された野性味で、月影に浮かび上がった角の大きな鹿系の生き物のイメージ。月影という、幻想的でカッコイイ映像が浮かぶ。なにか剥き出しではなく、きちんと加工された感じ。
けれど、村上龍は、なんだか、そのまんまワイルドな感じがする。生きるために、生の肉引きちぎって齧ってる。
誰にもこのお肉はあげない!! だってこれなかったら俺、死んじゃうもん。
そんな感じ。勢いのあるものがすごく好きなあたしとしては。村上龍は大好きなんだけれども。これはおもしろい、と思った。
けどあんまり評判良くないんだね。みんな野蛮なの、好きじゃないのかな。
人は死ぬし、あたしはとても人間を食べてみたいのでこういうのには、うずく。