Nさんに会ってきました

大阪に行く前にわたしておいた原稿。「想像以上の良い出来」と誉めてもらっていたんだけれど、わたしはとても不満。
もっともっと書き込めるはずなのに、どうして良いのか分からない。誉められても、あまり喜ばないわたしを見て不思議そうな顔をしているNさん。いつもなら「わーい、やったー」なんて云ってるところで「はい」と真顔で返事してんだから怪訝な顔をするのも無理はない。
だんだんNさんも、わたしの煮え切らない態度に腹がたってきたらしい。わたしはわたしで、どうにかしたいんだが言葉にならなくて悶々としている。二人でしばらく睨み合い。「おりえ、笑え」。何を言い出すんだ・・・。「笑えません」。「あかん、笑え」。無茶苦茶云う。やっと口を開くわたし。
「もっと、良くなるはずなんです。素材も良い、ストーリーも良い。キャラも立ってきてる。表現に奥行きも出てる。そこまで自覚できるほど書き込めてるのに、何かが不満なんです」
なるほどなーとNさんは、やっとニヤリと笑った。睨み合い、終了。
「欲が出てくるところまで、おまえは到達したんやなぁ」
到達とか、そんなことは分からんが、とにかく、もっともっと何とかなるんだこの原稿は。
「子供の七五三で、可愛らしい、愛しい我が子なのに、わたしが貧乏で化繊のチンケな着物しか着せてあげられないような、そんなもの悲しさがずっとあるんです。もっと裕福だったら、反物から買って全部誂えてあげられるのにって、ずっとイライラしてるんです」
はははーと笑い飛ばされる。やっとわたしが不機嫌な顔をしてる理由が分かり、Nさんは急にご機嫌になった。
二人であれこれ話し合い、一人ずつキャラの設定を深める。「このおっさん、この場で何て云う?」。わたしの頭の中で勝手に物語が始まった。ベラベラとしゃべり出す登場人物。それを聞き取ったままNさんに話す。「で、次にこういう行動に出るんですよ、この子が」。やっと話が前に進んだ。
「ほら、今おまえ、ええ顔して笑ってる。おまえが笑ってないと良いものは作れんねや」
「親がニコニコしてると、子供も笑顔の多い明るい子に育つってことですかねぇ」
「そうかもな」
すごく、前進してるよ。今年は動くぞって宣言しちゃった分は、ちゃんと動いてるよ。もうちょっとだ。もうちょっと、待っててね。