赤毛のアン

そうか、悲しい話はこう書けば良いのかぁ。
それを痛感した作品。
正直、最初はかったるい。アンはずっと空想ばっかりでどこか悲観的でうっとうしい。単なる妄想癖のあるキチガイ少女だ。「どこか憎めない」とか書いてあるけれど、あたしは憎いぞ。隣にいたら、かなりウザい子供だ。けど、これが主人公だ。脇役は無理やりにでもアンに惹かれ、アンは果てし無く魅力的な少女という設定から抜け出してはいけない。苦しいところだ。
赤毛のアンを読んで一番びっくりしたのは、実に淡々としているところだ。もう、とんでもなく感動的なセリフが出てきたりする。「わたしはずっとおまえのことを実の娘のようにおもってきたんだよぉ」なんて涙がこぼれて仕方ないようなシーンがあっても、そのセリフを云ったらそのシーンが終わってしまうのだ。それを聞いたアンがどんな反応をしたのかなんてことはどこにもない。そんなの感動して嬉しいわ! なんて云って抱き合って涙をこぼし合ったに決まってる、という簡単に推測できる部分は、思い切りよくカットしてあるのだ。だから湿った話にならない。これはすごい。何がすごいって、その涙涙の部分を書かない勇気がすごい。天晴れだ。かっこいいぞモンゴメリ
赤毛のアンは、どんどんおもしろくなっていく作品だ。最初は訳の分からない「合い呼ぶ魂」だとか、アンの妄想にひたすら耳を傾ける忍耐が必要なのだが。途中からはこっちがしがみついて「続きを教えてください、アンはどうなるんですかぁっ!!」とページをめくる悔しいが嬉しい状況が生まれる。
うちの姉が20代の前半の頃に赤毛のアンを全部読んでいた。静かに読書をしている姉の隣で、わたしは姉の作ったクレープを食べながら夏休みの宿題をしていた。ハウスの名作劇場のようなアニメでやっていた赤毛のアンは退屈で、姉がどうしてこんなものを読んでいるのか、あの頃は理解できなかったが。今なら分かる。
これは、読んでおくべきだ。
まだ続きが9冊もある。どこに売ってるんだろう。