キヨコ

すごい寂しくてでも弱音を吐ける相手は限られている。
こんな時間に電話して安心感を与えてくれる人間は・・・ とキヨコに電話。
一通り愚痴ったら大笑いし始めた。
「おりえちゃんでもそんなことで悩むんや。あっはっは。おもしろいな。あんたらしくないで、それにしても笑えるわ」
信じられない、それでも母親かっ と思ったが仕方ない。こういう人から私は生まれたんだ。
「キヨコちゃんさ、最愛の娘がこうやってたまに甘えてんねんからさー」
「え、それ甘えてるん? へたくそやな、あんた甘えるの」
「もう、あれやろ。愚痴聞くの面倒くさいんやろ」
「面倒くさいって、あっはっは。ちょっとな。もっとおもしろい話しようや」
ありえへんわ。愚痴の内容はかなり深刻な話題だったはずだ。なぜ笑い飛ばせるんだ。他人じゃないぞ、娘だぞ。しかも唯一嫁に行ってない可愛い最後の娘だぞ。
「オリエは答を知ってるやろ。どれが最善策か知ってて私に愚痴ってるんやもん。何を答えろっていうんよ。もう決めてるんやろ? 全部分かってて愚痴ってる。決めかねてるんじゃない。今寂しいだけやん。だからもっと楽しい話しようよ」

まいったな、と思った。腐っても母だ。いつか私はこの人に勝てるんだろうか。勝ちたいな。本音をいうと、私の生涯最大のライバルはキヨコなんだろうなって思う。
良い親を持った。