賃貸の審査通過

東京で家を借りることになった。私は育ちが貧しいので大阪の家が実は苦手だ。総フローリングにウォークインクローゼット。30平米もある。おしゃれな部屋を乱雑に使っていた。そして居心地はあまり良くなかった。
次は絶対に居心地の良い部屋を、と思い探しあてたのが、木造2階建て築数十年。なのになぜかトイレはウォシュレット。お風呂は古くてガスでガチガチやるやつなのに、洗面台は最新のやつ。こんなアンバランスな家が好きだ。たまらん。ということで見に行ってほとんど即決で決めた。
住所には「田園調布本町」と付く。なのに部屋のドアは写真の通り。大学の頃住んでいた、4畳半でトイレとお風呂が共同で和室なのに出窓が付いてて完全防音という部屋を思い起こさせる。あの家も不思議で良かった。また住みたいくらいだ。
友達同士で住むので大家が嫌がると云われ審査が心配だったのだが。でっちあげた就職先もぱっちり。
そして担当の名前はヤマダ。
ヤマダから連絡があり「審査通りました」というので、ワカに知らせるために、昼間メールしたら「うちには連絡ないぞ! ヤマダめ!」と返事が帰って来た。
ヤマダは、社長から直々に「オリエにはちゃんと対応するように」と仰せつかっている。ヤマダの会社の社長と、長年一緒に仕事してる不動産屋が、もうかれこれ5年ほどオリエにメロメロのえんまくん。そんな相手に下手な対応したら、ヤマダの立場がやばくなるのだ。権力万歳。
しかもえんまくんは「もし審査通らんかったら、俺のとこで会社契約するから連絡くれ」と伝えておいてくれたらしい。「なんかね、あかんかったら会社で契約してくれるってー」とワカに云ったら「そこまでしてくれはんの?!」と云われたが、それくらいしてくれると思っていたので、ワカの驚きように私がびっくりしてしまった。「え、ああそう、ありがとうって云っておいたけど」。「何考えてるんよあんたは。すごいことやで!」とプリプリ怒っていた。実は未だにワカの云ってることが分からない。良いやん、会社で契約してもらえるなら確実やしー。
私はカタギの仕事をしていないので給料明細なんて出ない。当然税金も払ってない。昨日まで保険証も持ってなかったくらいだ。「給料明細出ますか? ないですよねぇ。いいです、こっちで何とかします」とヤマダは云った。いいのかそんなの偽造して。
世の中ってたかが「社長」って肩書があるだけでこんなに道が広くなるんだなって思った。社長なんて石投げたら当たるくらいいるのに。ヤマダは今、必死になってる。年上だけど。お世話になってるけど、ヤマダはヤマダだ。いいやつだ。