ふと思い出した

塾の先生をしていた頃、中学3年生の男の子がタバコを吸っていた。その子は身体も大きく、頭も良くて、彼の言動にセンスがあるな、と感じていた私は、仲良く話をするようになった。

ある日、彼はこっそり私にタバコを見せた。俺はタバコなんか吸ってて大人なんだぜ、みたいなその幼い行動に、ああ、まだ中学生なんだなとしみじみ感じたのを覚えている。

私は二人でゆっくり話す時間もとれないので、手紙を書いた。

内容はシンプルなものだった。

「タバコってのは、嗜好品なんだ。人をおしゃれにも見せるし、ゆとりのある部分で楽しむもの。今の君は中学生で、親のお金でタバコを吸ってるのでしょう。それは、とってもカッコ悪いよ? 自分で稼いで自分のお金で楽しめるようになってからにしたら? 親の金使い込んでやる! って思ってるのなら、そんな300円程度のものでなく、もっとデカイ買い物をしてやりなさい。
親のすねかじって大人ぶってどうすんの」

そんな内容だったと思う。

短い返事の手紙が、ある日私の机に置いてあった。

「先生の云う通りやと思った。高校に入ってバイトするわ」

それなら良いよ。自分の道楽は自分の稼ぎで。
そう云って笑ったのを、ふと思い出した。
社会的なルールはちゃんとあって、そしてそれは守らないとならないものなのかもしれないけれども。

私はこれで良いと思う。
自分の甲斐性で誰も傷つけないことなら、何したって良いと思うんだ。

違うのかな。