口減らしに出された初めての夜

汚れを知らなかった頃のボク


ぼくは、よそに子にやられました。あんなにぼくを可愛がってくれていたママは、見知らぬ女の「うわー、ほんまに可愛いな。これほしい!」というふざけた戯言を聞いて「そんな汚れてるので良いんなら差し上げますよ」と即答した。ひどいよ、ママン。

ぼくはそのあと、握りつぶされそうになったり、必要以上に広げられたり、逆さにされてブンブン振り回されたり。あんなことやこんなことをされたよ。つらいよ、ママン。ぼく、ずっといい子にしてたのに。

酔っ払った新しいママは、ぼくをリュックのポケットに突っ込んで持ち帰ったんだ。そのポケットにはウォークマンのイヤホンが入っていて、ずっと音がしてた。こんなだらしのない女がこれからぼくのママになるのかとおもうと憂鬱になったよ。ぼくはイヤなことを忘れようと、その音楽に合わせてポケットの中でイカしたダンスをすることにしたんだ。少しずつリズムに慣れてきていい感じにステップが踏めるようになって、ぉ?おれってダンサーになれるんじゃね? なんておもった途端、新ママが次の目的地に着いたんだ。煙草を取り出すためにリュックを開けた新ママは、音が漏れていることに気づいてスイッチを切った挙句、HOLDをカチっと入れてしまいやがったんだ。

ボタンだったら踏みつければなんとかなるけれど、HOLDはスライドさせないといけないから、ぼくにはどうにもならない。このアマぁっ! ぼくは生まれて初めてそんな汚い言葉を使った。ママン、ぼくはグレてしまいそうです。

家にやっと帰り着き、いつもしてもらっていたように「可愛い」とナデナデしてもらえるとおもっていたぼくを、この女は「これもらってん!めっちゃ可愛いやろ!鳥やしさ、泳ぐかなぁ」なんて恐ろしいことを良いながら友達らしい女の子に見せ始めた。お友達は「鳥は飛ぶんやよ、泳がないでしょう。しょうもないこと云うてんとパジャマに着替えなさい」と冷静に突っ込んでた。こんな訳の分からない女の友達が、こんなにまともな人で、ぼくは少しほっとしたんだ。

でも、ほっとしたのはほんの束の間だったんだ。「こうやって広げたら、なんか違う生き物みたいじゃない?」「鳥の逆さ吊り〜」なんてケタケタ笑いながら、フツウに生きている人なら考えつかないような恥ずかしいポーズをたくさんさせられた。ママン、ぼく、汚れちゃったよ。

ひとしきりぼくを弄んだあとは、小さい顔だけヒヨコのキーホルダーを取り出して、それをまた嬉しそうに披露してた。この女はまだ着替えも済んでなくて、下だけ履き替えて上はブラジャーだけでベットに座っていました。お友達の女の子が「ほんまに世話かかるなぁ」と良いながら、このはしたない女にパジャマを着せてた。こんな若い女の子に「世話がかかる」と云われるような人に、ぼくの世話なんて絶対にできないよ。

この自分ではパジャマ一つ満足に着れない女は、ぼくをパソコンのモニターの横に座らせました。ぼくはそこで、顔だけ君が、ぼくよりマシな凌辱をされているのを眺めていたんだ。顔だけ君には、結婚するまで他人には見せられない恥ずかしい部分が付いていないから、羨ましかった。

ママン、ぼくはもう恋もできずに生きていかないといけなくなっちゃったよ。

載せておいた写真は、汚れを知らなかった、愛情に包まれていた頃の無邪気なボク。

ママン、ごめんね。勝手に写真借りちゃったよ。どうしても汚れていないボクを見せたかったんだ。今日のぼくを見たら、ママンは心配で東京まで飛んできちゃうよ。来てくれなくても、悲しいし・・・。クレームはしないでね。ほら、新しいママは、あんまり頭よくないから。クレームなんて入れたら、ママンに逆ギレしちゃうよぉぅ)

《画像はこちらから勝手にパクりました。
http://mifiko.bblog.jp/entry/117491/