親子の会話

どうしようもなく憂鬱で、また自分のことが嫌いになりそうだったので、あっちゃんに電話して、キヨコにも電話してみた。母キヨコ、61歳。深夜3時、まだ起きてる。さすがオリエを産んだ女だ。えらいぞぉ。
「どないしたん」
辛気臭いあたしの声に驚いたらしく根掘り葉掘り聞いてくる。あたしもまた何でも正直に答える。
お「あんな、あたし、すっごいモテるねん」
母「うん。そうやろな。あたしの子やねんから」
お「うん。ほんでな、今までずっとチヤホヤされて生きてきてん。どこに行ってもおりえちゃんおりえちゃん云われてな。それがな、なんかいま、強烈に自信を喪失してるねん。すごい勢いで。これ、なんなん? あたしを産んだんやからなんか思い当たるやろ。なんでいまあたし、自信ないのよ」
母「そんなもんお腹から出てきてしもたら他人やんか。滅多にここにも帰ってこんくせに。分かるかいな」
お「他人てあんた母親やろ。産んだ責任取りぃや」
母「なにしてほしいのよ」
お「んー、慰めて。我が子を慰めてみ。ほら。できるか?」
ここで二人で大笑いして、なんだかいろんなことが良い意味でどうでも良くなった。
やっぱり二人で話をしていると、楽しいのだ。
母「あんたはあたしが産んだんやから。最強の星の下で、この私が産んだんやから。何も怖くないし、何も心配せんでいい。あんたの思うように生きて良いねん。いつでも誰かがあんたを守ってくれてるから。私は母親として、あんたをそういうふうに産んだんやから」
お「やっぱり産んだだけかい。そやな育てたんは姉ちゃんやもんな」
母「なに云うてんの。あんたのために世界一の娘を二人もうんで育てたんやで。良いお姉ちゃんやろ。その姉二人は私が育てたんやで」
キヨコの主張は妙に説得力があるが、どこか間違ってる。
でも、良い。これがあたしのおかあさんだ。
汚いものも美しいものも、醜い部分も可愛い部分も、全部まとめてキヨコで。全部まとめておかあさんだ。
しかたない。