ねえちゃん

あたしには二人姉ちゃんがいる。昨日から次女が泊まりにきていた。夜遅くまで二人でいろいろ話をしてたんだけど。あたしに知らされていないことがたくさんあって驚いた。
お父さんがなぜか姉ちゃんやキヨコや叔母の夢に出る。出てくるときは、たいがい泣いてるらしい。そして、そういうときは、絶対にあたしたち姉妹に何かある。
あたしがキヨコに捨てられたときにも、次女の夢にほとんど毎日現れてお酒を飲んで泣いていたらしい。その頃は姉ちゃんはあたしの環境を知らなかったので「おりえは元気で過ごしてるから大丈夫やで」とお父さんに夢で必死に伝えていたそうだ。それから一月ほどして、いろんなことが発覚して、あたしは姉に引き取られた。姉が引き取ることが決まったとき、お父さんはまた夢に現れて「あやこ、釣りに行こう」と楽しそうに笑ったそうだ。姉はその夢をみて「ああ、お父さんこれで安心できたんやな」と思ったらしい。すげー。姉ちゃんすげー。
姉ちゃんが流産したときは、キヨコの夢に出てきて、家事なんて一切しなかったお父さんが汗を流して洗濯機を洗っていたという。「あんたらのお父さんが、夢に出てきて洗濯機を洗うねん。あの人があんなことするなんておかしいねん。洗濯機って何を伝えたいんやろなぁ」とキヨコがこぼしていた矢先に、姉の妊娠が分かって、それがすぐに流産した。細胞の以上で、子宮から全部掻き出してしまわなければ、姉の命も危なくなるような状態だったらしい。子宮が洗濯機ってのも、どうよ? と思うけれど、キヨコは姉の妊娠を知った瞬間、すごい悲しそうな顔をしたのをはっきり覚えている。「赤ちゃんがうまれるー」と大喜びするあたしを、とても切ない表情で見ていた。キヨコはすぐに気づいたんだなってのが、今だから分かる。
姉が離婚したときも、そうだった。叔母の夢に現れてすごい泣いてたそうだ。叔母が心配して長女に電話した。長女は自分じゃないので、おりえかあやこだと思い、あやこに電話した。「あたしのことやわ、その夢」。ただびっくりしたらしい。
お父さん、やるなー。っていうか、こんなオカルトな偶然もここまできたら信じていいのかもしれない。すげーな。姉ちゃんたち。
おりえはお父さんを夢で見たことなんて、ない。きっとおりえは、お父さんにとったら、これからもずっと「ちっちゃいりろくん」なんだろうな。
へんな感じだ。